河合良彦

鯱旗印肉 書画落款用

昨年の年末に新たに発売されたシャチハタ株式会社製の朱肉です。

「鯱旗印肉 書画落款用 50号」という商品名です。
(しゃちはたいんにく しょがらっかんよう)

容器内径:約53㎜  印肉容量:15g  容器材質:陶磁器

価格:2,940円 (税抜き2,800円)

この商品はいわゆる「練り朱肉」で一般的によく使われている布張りのスポンジ朱肉とは違います。

上の写真にあるようなスポンジ製の布張り朱肉が一般的ですね。オフィスや銀行へ行ってもこのタイプの朱肉が置いてあるのではないでしょうか。

押しやすいし、印肉が印鑑の印面に詰まることもないし、ヘラを使って朱肉を練り直す必要もありません。

朱肉のツキが悪くなってきたら、「朱の油」と言う補充インクを足せばいいだけです。

非常に便利で実用的です。そら日本中に普及するはずです。

しかし石印材で篆刻をする人や、昔からの「練り朱肉」に慣れている人はスポンジ素材に布張りをした朱肉はお使いになりません。

それはしっかりと捺せない事や、印影の綺麗さ、奥深さ、色の種類の少なさなどに不満をお持ちであるからではないでしょうか。

そこで今回、新発売となったのが練り朱肉である「鯱旗印肉 書画落款用」です。

練り朱肉をオフィスから一掃した布張りスポンジ朱肉を普及させたシャチハタ株式会社が何を今さら原点回帰かい。

と、おっしゃる方もいらっしゃるかと思いますが、シャチハタ曰くこの練り朱肉は画期的で革新的な点があるようです。

 

このリーフレットに書いてあることを載せていきますね。

1)高級有機顔料を使用している為、印影の保存性に優れており、長期に渡り美しい印影を残すことができます。

2)印影の鮮明性に優れ、印肉の繊維が付着することなく、画仙紙や和紙へのにじみもほとんどありません。

3)重金属(鉛、水銀、カドミウムなど)を含有しておらず、環境汚染や人体への安全性に配慮した印肉です。

4)印肉の硬化や油分の分離が極めて少なく、使用前に練り直す必要がありません。

5)容器は開窯200年以上の伝統ある「幸兵衛窯(岐阜県多治見市)」製の陶磁器を使用した、品格ある純国産品です。

これらがこの商品の特長であるとの事です。

僕なりの感想を言えば 3) の「重金属を含有していない」という事が一番のポイントではないかと思います。

元々、朱肉は泥や植物繊維に松ヤニ、ロウなどを混ぜたものを硫化水銀や硫化カドミウムの含まれる無機顔料で着色したものです。

それを近年は人体や環境に悪いと言う事で、硫化水銀や硫化カドミウムをやめて鉄やモリブデンなど毒性の低い無機顔料で代用して着色しています。

なぜ体や環境に悪いのに硫化水銀や硫化カドミウムの毒性の高い重金属が含まれる無機顔料を使用していたかというと、その当時の化学の知識なども勿論あるのでしょうが、やはり保存性が高いということがあります。

実際、平安時代に捺された印影が今も残っています。これは朱肉の保存性の高さを物語っているのではないでしょうか。

 

さて、ここでなんですが、今回シャチハタ株式会社は布張り朱肉によってすでに駆逐したはずの練り朱肉市場にあえて参入してきました。

それは練り朱肉の持つ長所を残したままで、短所を克服できたからだと思うのです。

その一番のポイントが「重金属を含有していない」という事ではないでしょうか。無機顔料ではなく有機顔料で印影の長期間に渡る保存性や鮮明性を確保したこと、また印肉をヘラで練り直す手間を軽減できた事。これらは実は朱肉の歴史の中ではとてもエポックメイキングな事ではないかと思うのです。

従来品に遜色のない品質で、地球や人間に優しいエコロジーなモノを作り上げることは、どの分野においてもとても困難を伴うことだと思います。

そしてまた日本における練り朱肉市場なんてホントに小さいものだと思います。そこに新商品を投入する心意気たるや立派なものではないでしょうか。

なのでエコな練り朱肉をお求めの方は是非、「重金属不使用の朱肉を下さい」とご用命下さいませ。

もちろん当店にも置いてございますので、ご来店お待ちしております。

 

最後までお読み下さり、ありがとうございました。

河政印房 店主

 

2012.01.21